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生きるという事は死ぬまでにこの世に生を受けた事の意味を探す旅

スティーブへの手紙

      2011/10/08

拝啓 Steve Jobs殿

56歳という若さでこの世を去ったあなたへ、世界中から悲しみの声が聞こえます。家族でも親族でもないたくさんの人々が、あなたの死に涙を流しているのです。異様な光景だと指摘する人もいますが、自分が師と仰ぐ人や自分が大好きなアーティストが亡くなったのと同じ感覚なのだから、これはSteve Jobsという人間がどれだけ愛されていたのかが解るのではないかと思っています。

さて、突然のCEO辞任から今回の訃報まで日数があまり無い事から、Apple社員へ向けたメッセージ「ついにその日がきてしまった」の「その日」は退任の日では無かったのですね。もうそのときには余命宣告をされていたのではないでしょうか。スタンフォード大学でのスピーチの中でもおっしゃっていた言葉を思い出します。

 「私は17歳の時、こんな感じの言葉を本で読みました。「毎日を人生最後の日だと思って生きてみなさい。そうすればいつかあなたが正しいとわかるはずです。」これには強烈な印象を受けました。それから33年間毎朝私は鏡に映る自分に問いかけてきました。「もし今日が自分の人生最後の日だしたら今日やる予定のことは私は本当にやりたいことだろうか?」それに対する答えが「ノー」の日が何日も続くと私は「何かを変える必要がある」と自覚するわけです。」

「その日」とはすなわち「死」を意味していたのですね。あなたの訃報を聞いてからずっと人生最後の日について、一日考えて過ごしました。幸運にも私はあなたの訃報をあなたが世に送り出したデバイス-iPhoneで知るコトができ、あなたの訃報でアタマの中がぼんやりとしてしまった一日は仕事が休みで影響は少なく、人生最期の日について考えていてもすぐ側には最愛の妻と幼い娘がいました。そして何度も僕の中で考える「死」というものについて、あなたの言葉を思い出そうとしていました。

誰も死にたいと思っている人はいません。天国に行きたくても、そこに行くために死にたい人はいません。それでいて、死は誰もが向かう終着点なのです。かつて死を逃れられた人はいない。それはそうあるべきだから。なぜなら「死」は「生」による唯一で最高の発明品だから。「死」は「生」のチェンジエージェントだから。つまり古いものが消え去り、新しいものに道を開ける働きです。いまの時点で、新しいものとは、君たちのことです。でもいつかは、君たちもだんだんと古くなり、消え去るのです。あまりにドラマチックな表現なのですが、それが真実なのです。

果たして僕に残された時間は後どのくらいあるのだろうか、そう考えながら。

僕がApple製品に初めてであったのはLC-III。専門学校への体験入学の際にEZ Visionに降れることが出来、誰もが簡単にコンピューターを操作できる事に驚愕しました。10 CLS から始まるプログラミング。「BASICマガジン」を片手にPC-6001へ文字列を入力してはRUN。うまく動作しないと一文字ずつ追いかけていました。そんな中学生はPC-6001,8001やFM TOWNS といったパソコンを触った事があったからなおさら、マウスで見た目通りに操作できるコンピューターに驚き以上の何かを感じました。

専門学校から就職してニヤリとしたのは会社の事務所にもMacがあった事。1台のLC-630でワイワイ出来る会社に入って本当に良かった。入社して間もなく、お金もないのにデスクトップマシン環境を僕はそろえます。PM7500です。本体、画面、プリンターなどなど、様々な周辺機器やらいろんな物をそろえて、総額50万円近くはしたはずです。給料もものすごく安かったにも関わらず。長い長いローンを組んで。それからPowebook G3 PowerBook G4、MacBook Pro という具合に更新していきます。デザインで一番好きだったのはPMG3でしょうか。そういや黒いMacBookProはいつ出るのでしょうか。首を長くして待ってます。iPodだって初期型を買いましたよ。iPod Classicだって買いました。妻にはiPod touchを贈りました。と、ここまで書いてそこまで投資してない事に気が付きました。さほど信者ではないようですw

SteveがCEOを辞任して、日本の雑誌では特集が組まれました。ありがとう、スティーブ。来月号はどうなってしまうのか心配です。もはや掻き集めてしまったくらいの濃い内容です。いや、もちろんiPhone4Sの特集で十分だとは思うのですが。

人生には頭をレンガで殴られる時があります。しかし信念を失わないこと。私がここまで続けてこれたのは、自分がやってきたことを愛しているからということに他なりません。君たちも自分が好きなことを見つけなければなりません。それは仕事でも恋愛でも同じこと。これから仕事が人生の大きな割合を占めるのだから、本当に満足を得たいのであれば進む道はただひとつ、それは自分が素晴らしいと信じる仕事をやること。さらに素晴らしい仕事をしたければ、好きなことを仕事にすること。もし見つからないなら探し続けること。落ち着かないこと。心の問題と同じで、見つかったときに分かるものですし、愛する仕事というのは、素晴らしい人間関係と同じで、年を重ねるごとに自分を高めてくれるものです。だから探し続けること。落ち着いてはいけない。

思えばMacが無かったら、今の世の中は本当にどうなっていたのか解りませんね。様々なクリエイティブな業界では必ずと言っていい程Macが活躍しているのですから。ProToolsがなかったら、今の音楽業界はどのような方向だったでしょうか。いやそもそも、iPodが産まれなかったら、それまでのMP3プレイヤーだけで世界は進化していたのでしょうか。いやいやいや、マウスが無かったら、30年前に想像されていた未来はやってきたのでしょうか。

未来を変えることは誰にでも出来る。そう信じることが出来るならば。誰にでも可能性はあり、誰にでも何かを成し遂げることは出来る。すべての始まりは興味と信念とちょっとした遊び心や冒険心なのかもしれません。

ありがとうスティーブ。あなたには言葉では尽くしきれぬ程の感謝の気持ちにあふれています。あなたにとってただの1ユーザーにすぎない僕ですが、僕のようにあなたのおかげで今の人生があるのかもしれないと感じている人は無数にいると思います。あと20年くらいはあなたの生み出す未来に興味があったのですが、あなたはこの世を去る事で新しい物に道を開いたのですね。あなたの名前は永遠に歴史の中に残されるでしょう。

ースティーブジョブズ コンピューターを一人一人へ それぞれのポケットへ分け与え そして想像しうる未来への架け橋を造った男へ

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